第四回 - 700字文体シャッフル
終了!
Theme: 映画
投稿期間: 10月14日 ~ 10月16日
予想期間: 10月17日 ~ 10月19日
参加方法: 以下のグーグルフォームに必要事項を入力して送信してください。今回は個人のDMじゃないよ!
参加資格: SCP-JPに著作ページがある or Taleを+1以上で1本以上残している。AI制作ではない。
※ちなみに今回は短歌禁止です。レギュ変!
Q and A
Q.文体シャッフルって?
A.みんなで匿名で文書いて、それを誰が書いたか当てる企画です。何書いたかは秘密にしてね。
Q.過去作は?
A.下記リンクから文体シャッフルハブに飛べます!
Q.構文は?
A.by ukwhatn。偉大なる御大に感謝。
Ruka_Naruse
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著者ページ
pictogram_man
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著者ページ
MtKani_666
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著者ページ
hitsujikaip
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著者ページ
kyougoku08
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著者ページ
meshiochislash does not match any existing user name
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著者ページ
2MeterScale
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著者ページ
usubaorigeki
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著者ページ
WagnasCousin
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著者ページ
R_IIV does not match any existing user name
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著作
EianSakashiba
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著者ページ
indonootoko
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著者ページ
Kuronohanahana
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著者ページ
islandsmaster
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著者ページ
stengan774
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著者ページ
Jiraku_Mogana
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著者ページ
KABOOM1103
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著者ページ
Dr_rrrr_2919
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著者ページ
aisurakuto
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著者ページ
投票: 誰がどれを書いたのか、さあ当ててみましょう。投票は以下のフォームからさくっとどうぞ。わかんないところは正直に空欄にしちゃいましょう。
- No.1
- No.2
- No.3
- No.4
- No.5
- No.6
- No.7
- No.8
- No.9
- No.10
- No.11
- No.12
- No.13
- No.14
- No.15
- No.16
- No.17
- No.18
- No.19
- No.20
- No.21
- No.22
- No.23
- No.24
- No.25
- No.26
- No.27
- No.28
- No.29
- No.30
- No.31
- No.32
- No.33
- No.34
- No.35
- No.36
- No.37
- No.38
- No.39
author:WagnasCousin
WagnasCousin×2 Dr_rrrr_2919×2 roneatosu kyougoku08 tateito tutuji
赤い異形の頭を持つ男に追いかけられている。
体力には自信がある方だが、この化け物には捕まったら終わりだと本能が訴えかけている。一か八かで戦ってやろうと言う気すら起こらない。息遣いすら聞こえそうな距離で、振り返る余裕もない。
俺が今感じている異常はそれだけじゃない。化け物と出会ってからはサイレンの音と、何かを訴えようとする女性の声が脳内に響き続けている。これは夢か何かだと思いたいが、乳酸の溜まった足が、酸素を求める肺が、これは現実だと訴えている。
逃走先にカフェが見えたが、助けを求めるのは諦めた。別に俺以外の誰かが襲われるのを心配した訳じゃない。その逆だ。俺以外の誰かを襲うような奴ならとっくに俺は奴の標的から外れているはずだ。むしろ、建物の中に入って逃げ場が無くなる方が怖い。
俺はパルクールのような動きで路地裏を通り、階段を駆け上がり、屋上に出た。地上まで7、8メートルはあるだろうか。追い込まれたように見えるかもしれないが、もちろん何も考えずに来たわけではない。俺は勢いに任せて屋上から飛び降り、衝撃を分散させて着地した。化け物が追いかけて来る気配はない。流石にこの高さを飛び降りる気にはならなかったようだ。
助かった。ほっとして顔を上げると、正面に先ほどと全く同じ異形の顔の男が5体並んでいた。無機質な顔がこちらをのぞき込み、サイレンの音が一際大きく鳴り響く。
俺は息を呑んだ。逃げなければと思ったが、足が動かない。走り続けた上に飛び降りの衝撃を受けた足はすでに限界を超えていた。成すすべもなく羽交い絞めにされ、薄れゆく意識の中で、何かを訴えようとする女性の声が脳内に響いた。
「NO MORE 映画泥棒」
author:Gokipo
kata_men×4 1NAR1 nabes KABOOM1103
「いやー、いい話でしたね」
館内が徐々に明るくなるとともに、目を赤く腫らした女の顔が浮かんでくる。俺はそれを真っ黒な目で一瞥し、荷物を拾い上げる。
全く、何故この女はよりによってベタベタのスポ魂映画を選んだのか。最初から主人公を優勝させるために作られた展開。監督がここで驚かせたいのだろう、感動させたいのだろう、が手に取るようにわかる。
「私こんなにズビズビ泣いちゃって、他のお客さん引いてないですかね?」
「いや、まあ、そんなことは……」
友人から勧められてマッチングアプリを始めてみたものの、出会う女どもは大体この程度の感受性しか持ち合わせていない。10人会えば1人ぐらいは合う人間がいるだろうと高をくくっていたが、この女もハズレか……。
その後、女とはショッピングモールで適当な飯を食って解散した。ため息すら出なかった。
家でテレビをつけると、まだ今日の野球が終わっていなかった。ホークスが勝てば優勝という場面で、試合は同点のまま11回裏、ライオンズの攻撃。
プロ野球は好きだが、贔屓のチームはとっくにBクラス確定している。今更どのチームが優勝しようが、特に何の感想もない。しかし、この日の俺は、俄然ライオンズを応援する気分だった。
その想いが通じたのか、ライオンズ山川はホークス藤井の変化球を鋭く振り抜いた。高々と舞い上がった打球は、そのままレフトスタンドに飛び込んだ。ホークスのサヨナラ負けだ。藤井は呆然とした表情で打球を見つめていた。
試合後、ホークスの選手たちはホーム球場のライオンズファンに挨拶をして回った。その中には、涙を浮かべる藤井の姿があった。
ああ、やはり生きるとはこういうことだ。
author:KABOOM1103
KABOOM1103 roneatosu Gokipo Kuronohanahana tateito ShinoguN
都会の大学から逃げるようにして実家に帰省した。
背伸びして入った大学は想像以上にみんなすごくて、自分が置いて行かれないように勉強していたら人間関係をおろそかにしてしまった。いや、人間関係がうまくいかなかったのは劣等感故に話すときにどうしても恭しくなってしまう自分を嫌悪したからか。これも言い訳か。まあ、少し忘れよう。折角帰ったんだから。
ああそうだ、大好きな映画でも見に行こう。受験期間が長かったせいで、しばらく見に行けてなかったんだ。楽しいことに没頭すれば、辛いこともしばらく思い出さずに済むさ。
「よっ、久しぶり」
「ああ、久しぶり……」
「元気にしてるか~」
懐かしい友達と一緒に見ることにした。とはいっても会ってないのはせいぜい半年だから大して変わらないが。その友達も良い大学に入っているので、何かしら親近感がある。あまり大学の話をしないあたり、こいつも同じ境遇かもしれない。今はこの他愛ない話が心地よい。
『こんなの新時代じゃねえ!お前がイチバンわかってんだろうが!』
思わず圧倒されてしまった。別に、登場人物のキャラと被るわけでも状況が似てるわけでもないのに感情移入してしまった。ただ一つのセリフをたまたま重ねてしまった。
『お前が見たい新時代がこんなものなワケねえだろ!』
次々主人公の言葉が刺さる。何とか映画から現実の自分を引き離すのでいっぱいいっぱいだ。思わず涙が出てくる。友達は別に泣いていなかった。まだ中盤だから当たり前か。恥ずかしくて、目をそらした。
「いやー何回見ても迫力すごいな!」
「……前に見てたのか?」
「ああ、大学の友達と一緒に一回だけな」
逃げ場所はもう無くなっていたようだ。
author:highbriku
Gokipo×2 meshiochislash EianSakashiba Nununu kyougoku08 AAA9879
実家の物置を片付けていると、くたびれた映写機が埃を被っているのを見つけた。恐らくは祖父のものだろう。目近で見たのは初めてだ。
祖父はもうずっと昔、僕が赤子の頃に他界している。記憶は当たり前のように朧げで、僕の中の彼の人物像は両親が語る話とアルバムの写真によって形作られたものだ。時折耳にする昔話や、色褪せた写真は彼が温和な人間であったことを想像させる。ただ、実体験の伴わない彼の像は、僕にとって教科書に顔を見せるモノクロな彼らと同じような存在だった。
片付けを済ませた僕はその日の夜、自室で映写機をぼんやりと眺めていた。運んでくるのはちょっとした重労働ではあったが、それは僕を強く惹きつける魅力を持っていた。もちろん映写機の使い方なんてさっぱりわからない。それでも、モノクロだった祖父が僕にぐっと近づいて来たような気がしたのだ。
「あー映写機ね!持ってた持ってた。まだ家にあったんだあ」
映写機のことを母に尋ねると、僕の知らない祖父の影が浮かび上がる。他人の秘密を暴くような、自分のルーツを探るような、悦ばしい背徳感に僕は浸っていた。
物置には映写機と共にいくつかのフィルムが缶の中に保管されていたものの、デリケートなものだろうことは想像がついたし、セットの仕方なんて知らないので開けないままにしている。
でもせっかく持ってきたのだから。と、明かりを消してなんとなく電源を入れてみた。暗闇の中で立てられるカタカタという音を聞きながら、薄明るく照らされた部屋の壁をじっと見つめる。
想像の中の祖父と気持ちを重ねていく。いつかこの缶を開ける時、きっとまたそれは僕に近づいて来るのだ。そんな確信めいた期待があった。
author:tutuji
tutuji×2 Jiraku_Mogana×2 Hasuma_S Dr_rrrr_2919 AAA9879 indonootoko
インクレディブル・バルク
★★★★☆
今回インクレディブル・バルクというハルクの偽物映画をAmazonプライムにて視聴したがハルクに似ても似つかないクオリティのZ級映画である事は間違いない。主役のバルクについてまず明らかにMMDモデルの方がポリゴン数が多いし背景はフリー素材。役者の切り抜きも雑過ぎてジャギっている。車に至っては透過PNG画像を役者の上から貼り付けて乗車シーンを済ましている。設定もおかしい。ミサイルが登場する時代設定だが悪の親玉が中世ヨーロッパのような城塞に住み、門番はTシャツとジーパン着用に槍と円盾で武装したラフな格好していて世界観が有るようで無い。なぜか爆発のVFXはある。時々カートゥーンになる。しかしこれで良い。Z級映画は時代に合わない低クオリティこそが魅力で味わいだ。マニアには低燃費感こそ病みつきになる。Z級に魅了されているならおすすめだ
author:nabes
nabes KABOOM1103×2 Nununu R_IIV TOLPO EianSakashiba
「私がこの作品に出れるんですか!?」
「い、いえ!少しだけの役でも嬉しいです!」
「はい!精一杯がんばります!」
「道を聞かれる少女の役かー、えへへ」
「おかーさーん!聞いてきいてー」
「うん!頑張る!」
「二言だけとはいえ、ちゃんと練習しておいたほうがいいよね……」
『ええ、この道を真っ直ぐいけば駅につきますよ』
『まあ、騒がしい人ですね』
「よしよし」
「うんそうなの!エミちゃんも観に来てよね!」
「そ、そうかな?へへへ、あした美容院いっとこうかなあ」
「うー、緊張する……ミスらないようにしなきゃ」
「よ、よろしくお願いします!」
『ええ、この道を真っ直ぐいけば駅につきますよ』
『あら、騒がしい人ですわね』
「はー……なんとか終わった、ちゃんと出来てたよね?」
「あ、はい!お疲れ様でした!」
「はい!ありがとうございます、完成たのしみにしてます!」
「おはよーエミちゃん、撮ってきたよー」
「うん、キンチョーしたけどきっと上手くできたと思うよ!」
「女優目指しちゃおっかなー?えへへー調子乗りすぎ?」
「クラスのみんなに?ええ〜恥ずかしいよ〜」
「席、Bの14だって」
「撮影の時より緊張してたきかも……」
「終わり?」
「あ、あれ?」
「…………」
「う、うん……聞いてみるよ」
「あ、もしもし」
「はい、はい、そう……ですか」
「いえ、大丈夫ですありがとうございました」
「えっと、セリフ……」
「うん……尺の都合で仕方なく、カッt /
author:k-cal
k-cal×2 Tutu-sh Hasuma_S indonootoko aisurakuto Mtkani_666 Utsuki_K
手からこぼれ落ちたポップコーンを追って、思わずスクリーンから目を逸らすと、隣に座る彼女の頭が虫になっていた。
小さく漏らした悲鳴は、劇場に響き渡る映画の爆音にかき消される。恐る恐る周囲を見ると、どうも彼女だけではない。他の観客全員の頭が虫にすり替わっていた。妙に油じみた光沢と折れ曲がった触角、大きな目、太い顎。明らかに虫のものであるとしか言えない顔が、まばらに席を埋めている。この事態に、誰も反応していない。気づいていないのだ。クライマックスで目まぐるしく展開する場面が、私以外の観客の注目を独占している。暗がりにまぎれた奇怪どもが、画面の点滅に照らされその輪郭を浮かび上がらせているが、それを見ているのは、私だけであった。
やがて映画が終わる頃には、全ての観客は元通りになっていた。帰り道、私は彼女の頭の形を確かめるように、何度もその頭を撫でた。触角らしきこぶはないか、顎は横開きでハサミのようになっていないか、繰り返し顔に触れて確かめた。どうやら彼女はそれを愛情表現だと思ったようで、ひどく喜んだ。曰く、私の恋心はとっくに冷めていると思っていたらしい。そうではなくて、実際のところ、私は照れ屋で、そのために素直に気持ちを伝えられないだけなのだ。とはいえそれは言い訳がましいので、そのときは伝えないことにした。
こういうことがあって以来、私は毎月、彼女──もっとも今は妻であるが──と映画へ行き、彼女が再び虫になっていないかを確かめることにした。つまるところ、あの異常な事件が私に与えたものというのは、結婚しても定期的にデートへ行くという、至極当然な夫婦円満の秘訣なのであった。
author:islandsmaster
islandsmaster×2 izhaya 2MeterScale usubaorigeki meshiochislash Ruka_Naruse Tutu-sh
故郷の街には映画館がなかった。
隣町にも、その隣町にも。足と自転車で行き着く範囲には、海と山とスーパーがひとつきり。
だから映画は公民館で観た。
土曜日の午後の会議室。ランドセルを廊下に放り出し、日焼けしたスクリーンを眺める。3時きっかりに爺さんがやってきて、知らない世界に俺たちを誘う。
映画は大して面白くもなかった。字幕は白潰れでちっとも読めず、中古のスピーカーが高音を削る。爺さんの趣味は西部劇とロマンスで、俺たちには半分も理解できなかった。聞き取れない外国語に知らない漢字。最後はみんな死んで終わり。一体何が良いってんだろう?
それでも俺たちは公民館に通った。
別に映画が好きだったわけじゃない。俺たちは未知が好きだった。人も景色も見知ったものばかり、テレビは親に占領され、本や雑誌は売ってない。俺たちはどこにも行けなかった。海と山の間にへばりついた漁港で、ガキの世界は閉じていた。
映画は向こうからやってきた。爺さんの軽トラの荷台に乗って。知らない国の知らない人が、恋して喧嘩してバカみたいに死んで。俺たちはそれが好きだった。
それもこれも皆、昔のことだ。
爺さんは死んだ。公民館は取り壊された。終いに漁港が閉じられて、今じゃ住んでる奴はいない。
当時はネットなんてものはなかった。今は誰でも携帯を持ってる。こんな辺鄙な街にいたって、知らない世界に簡単に触れられる。
もしかすると必要ないのかもしれない。それならそれで俺はいい。だけどもし、昔の俺たちみたいなガキがまだ残ってるんだとしたら、連れ出してやるべきだと思うんだ。
会議室が空いてるらしいじゃないか。土曜の午後3時、予約できるか?
author:kyougoku08
kyougoku08×2 k-cal tutuji EianSakashiba roneatosu ShinoguN
目が覚めると、薄暗い場所にいた。
薄暗いというのも、前の方で何かが光っていて、その光を浴びているからのようだ。
光源と思われる巨大なスクリーンでは、モノクロのゾンビが空を飛んでパリの街に週刊少年マガジンを落としていた。よく見るとかなり古い号のようで何故か『カメレオン』だけが切り取られている。
そう、ここは映画館なのだ。
客は自分ともう一人。手足は拘束され、唯一動く首でもう一人の観客を
「私はね」
見るまでもなく観客はシートを乗り越え近づいてくる。
手には『BLEACH』でしか見たことがないような大振りな刃物。
目を疑うまでもなくマナー違反だが、この状況ではパトランプ男も白旗を振るだろう。
「この映画が大好きなんだ。だからこの映画を貶す奴は全員捕まえて殺すことにした」
なるほど、理知的な判断だ。
そうすればレビューは満場一致で親指を上にあげるだろう。
下におろしたとたん自分の首が飛ぶのだから。
「じゃあ聞こう、この映画面白い?」
「あなたみたいな美人と見れるなら、どんな映画でも面白いと思いますよ」
嘘はない。ビックリするくらいもう一人の観客は美人なのだ。
「そういうのは映画体験としてあまり良くないから殺すね」
そう言いながら彼女は僕の横に座って手すりを両方とも占領する。横顔はスクリーンからの光に照らされて、スクリーンでは女神が掃除機で湘南を破壊していた。
「綺麗ですね」
「ちゃっちいけどね」
「貴女の横顔が」
「映画館ではお喋り禁止だから殺すね」
刃物を突き立てられた心臓が止まるまで、一緒にスタッフロールを見ることにした。
author:izhaya
izhaya 2MeterScale highbriku Hasuma_S Dr_Kudo stengan774 Dr_rrrr_2919 kyougoku08
先生、お久しぶりです。
いえ、メールで送った通りです。
俺に、映画が解るようになる手術をお願いしたいのです。
いや、ただの映画じゃなくて。
特に、クソ映画と言われるような映画が解るようになる手術が出来ませんか。
先生。
ほら、最初にやってもらった、英語が解るようになる手術。
あれには本当に助かりました。
両親も悩みましたし、相当な借金もしましたが、一か八かでお願いして良かったと思っています。
後悔なんて、何も。
お陰様で就職もトントン拍子で、すぐに元が取れましたから。
でもね、先生。
手術のおかげで一段上がった文化圏で、気付いたんです。
俺、人より感性が足りないんです。
レビューを見ずに、何となくで映画を借りられる人が居るんですよ、現実に。
チケットを予約せずに何となくで映画館に入って、フラッと惹かれた映画を観る人が居るんです。
知らない宗教の高尚な儀式のように、俺にはさっぱり解らないんです。
何となくで映画を借りて、ハズレだったらどうするんですか。
どうしてそんなことが出来るんですか。
いえ、先生。大問題なんです。
だって、解る奴らが訳知り顔で、無理して解らなくても良いとか、困った顔で言われても、劣等感が消えてくれない。
何故彼らは解るんですか。俺は解りたいのに。
微分方程式もラッダイト運動も解って来たのに。
先生、どうしてクソ映画は愛でられるんですか。
CGのサメに愛好家が居るんですか。
Why is the useless little finger loved!?
不出来なモノは愛されないんじゃ無かったんですか、先生。
先生。
どうして私は不出来なものを愛せないのですか。
author:tateito
tateito×2 nabes SuamaX k-cal Jiraku_Mogana Utsuki_K Gokipo
「えーっと、じゃあキャラメルポップコーンのLサイズとペプシコーラのLサイズで」
映画館の売店はやたらと列が長く、雑音に満ちている。列を並んでいる間、スマホでTwitterを見ていたのでメニューをまともに見ていなかったが、まあいいだろう。
「はいどうぞーお待たせしました」
「えっ…… はい」
Lサイズのポップコーンとコーラは想像の2倍以上デカい。2時間超の映画なので多い方が良いかなと思ったがこれもしかして二人分の奴か。
抱えるようにポップコーンとコーラを持ち、シアターへ向かう。チケットを渡すために財布に手を伸ばす、相当な困難だ。
どうにか席に到着するが、当然というかポップコーンとコーラは席のドリンクホルダーに収まらず、そのまま抱えて座る。
遅れてきたカップル客が奇異の目でこちらを見る。
シアターの照明は落とされスクリーンには様々な広告が映っている。全く興味を惹かれない。一個前の席にかなり座高が高い男が座り見えるスクリーンの面積が狭まる。
後ろからガヤガヤと騒ぎながら入ってくる学生の群れ。スクリーンではカメラとポップコーンの顔の男達が捕まっていた。
放送開始、を見計らったかのように甲高い声で鳴く赤ん坊。
右前の女子高生がスマホを開いている。どうやらLINEをしているらしい。
老人男性が立ち上がりスクリーンを遮りながら外に出た、と思ったらほどなくして帰ってきた。トイレだろうか。
照明が明るくなる。甘いキャラメルポップコーンとコーラは合わず、どちらも幾らか残っていた。シアターから出ながらゴミ回収に渡す。混雑の中で2回足を踏まれながら帰宅。
楽しい映画体験であった。
author:1NAR1
1NAR1×2 islandsmaster×2 aisurakuto Mtkani_666 indonootoko Kuronohanahana
父がホームシアターと呼んでいた小部屋に残っていたのは、もはやレザーの破れた椅子と不細工な自作のアンプだけだった。プロジェクタとDVDコレクションは既に母が二束三文で売り払ったらしい。スクリーン代わりに使われていた壁紙の僅かな変色だけが、かつて此処が一人の老人が作り上げたキネマだった事を覚えていた。
父は話のつまらない男だった。この時代において、ユーモアは概ね3番目くらいに重要なファクターになっていたが、彼はその事に気が付いていなかったように見えた。ついにはハラスメントの疑義により、窓際に追いやられたと何とは無しに聞き及んでいた。定年退職した夜も、花束の一つも持っていなかった事を覚えている。
高校生の時分、リビングでレンタルした映画を観ていたところ「こんな物を観ているのか」と父に話しかけられた事がある。それは少年誌で連載していた漫画を原作とした実写映画で、お世辞にも出来の良いものでは無かった。父は何やらもごもごと話しており、私もちょうどその映画には飽きてしまっていたので、DVDの返却をしてくれるのなら部屋で観ればいい、と父にレンタルビデオ屋の袋ごと押し付けた。
裂けた合皮からスポンジが覗く古ぼけた椅子に座りながら、その日の夕食の席で父がその映画の感想を珍しく饒舌に話していた事を思い出した。良い映画だった、というような話を繰り返して、母の機嫌がすこぶる悪くなったものだった。何も映していない壁紙のスクリーンにあの日の映画を灯す。もう詰まらないから止めよう、と僕は言い、ここから面白くなるんだ、と父が嬉しそうに答えた。
author:TOLPO
meshiochislash×2 Kuronohanahana tutuji Nununu kata_men Jiraku_Mogana
家事をやりながら、ゲームをやりながら、映画を見る。見るといってもこの始末では漠然とした内容しか分からない。あぁ、ここは盛り上がるところなんだなというのは映っているそれを見れば分かる。けれど、見終わると、見た経験が霧のように有耶無耶になっていって、ついには消えていってしまう。面白かったのは理解できるものの、どこが?と聞かれると答えられない。映画は好きだが、映画を見ることそのものがだるくてだるくてしょうがない。そういう訳で、映画館には行かなくなった。寝るに決まっている。
スマホに届いているメッセージを見ると、友人が映画館に行かないかと誘ってきていた。会った時、形ばかりの自己紹介で映画が好きとか言うとこういう弊害がある。断ろうとしたが、丸め込まれて、映画館に半ば強制的に連行された。交通費と無駄に高い入館料を払って、薄っぺらな奴と特に面白くもない映画を灰色に曇った目で見る。映画を見たというのに、記憶に残ったのは塩キャラメル味のポップコーンと氷が溶けて薄まったコーラの味だけだった。
去り際に、また行こうと一言。もちろん行く訳がない。帰路でため息混じりの軽い欠伸をする。他人の好みに付き合わされた挙句、脳がもう映画を楽しめなくなっている。ポップコーンとコーラに消えた時間と金を後悔したが、そうしたところで返ってくるわけでもない。スマホからブラウザを開き、さっき見た映画のレビューをぼーっと眺める。5つ中3つの星をつけて、スマホをポケットにしまう。今日の天気は曇り。風も雨もなし。空の灰色は無限に続いていた。
author:jiraku_Mogana
Jiraku_Mogana izhaya×2 SuamaX TOLPO ShinoguN usubaorigeki
映画館が嫌いだ。
数時間も何もできずに拘束される。スマホも触れない。トイレにも行けない。
知らない人と暗い室内に押し込められる。腕かけは一つしか与えられない。
前の人が大きいと画面の下が見れない。前のめりになる奴はその頭を地面にめり込ませたくなる。
ガキがわめいて静かに見れない。席の並びがどうとかでずっとぶーたれる。
飲み物が高い。そのくせ外部からの持ち込みは禁止してくる。
今時ネットでいろんな映画が見れるのに交通費をかけて行かなければならない。予約も必要な時がある。最新作が見られるのはいいけど。
4DXをウリにしてるが本編の映画より始まる前のデモの方が驚きがデカい。機能の何個かはたぶん本編で使われていない。雪とか。
何故か館内は豪華すぎる装飾がされている。シャンデリアとかあった。映画が始まってもいないのにワクワクさせられてしまう。
売店のグッズに目移りしてしまい時間が奪われる。どうせ買ってもその内忘れてどこかに放置されてしまうのに。そのくせ掃除の際に見つけると懐かしい気持ちになる。
スクリーンが大きすぎる。視界が映画に奪われる。テレビじゃ分からない水の演出には息苦しさすら感じてしまう。
音が降り注いでくる。大音量で。
自分が面白いなと思った場面で笑い声が上がると感情を共有してる気分になる。
映画を見終わり、だらだらと列をなして出口に向かう。外はひどく眩しい。
映画館が好きだ。
author:stengan774
stengan774 SuamaX×2 meshiochislash×2 Dr_rrrr_2919 nabes SuamaX
気付けばまたこの劇場にいた。映写機の投げかける光にもホコリがちらつく薄暗いハコの中で、いつも通りスクリーンはINTERMISSIONのただ一文を浮かべている。
「よう、いつからだ?」という声。シートへ深く沈め込んでいた体をヒネって振り返れば、スーツ姿の"俺"がドリンクを啜りながら立っていた。
「16歳」
「高一の頃か、随分懐かしいな」
一つ席を空けた隣にドカリと座った"俺"は、ぼんやりと前を眺めるように虚空からポップコーンを取り出して口に放り込む。その乱れた髪や血走った目にあえて意識を注がないようにしながら、俺も続きの始まる気配がないスクリーンに向き直った。
「その頃ってなると、体育祭の件か?高校だとここに逃げ込んだのが多すぎて思い出せねぇな」
「ネタバレやめてくれ。新学期早々、課題を忘れてクラスの前で詰められてた時だ」
そして何もかも嫌になって、気付けば俺はここにいる。カスみたいな世界の時が止まり、人生という映画のインターミッションに逃げ込んで…落ち着くまで時間を潰す。どこからでもここだ、いつだってそうだ。
「おっとスマン。俺は25歳、寝坊で大遅刻をかまして、ガラガラの電車に乗り込んで大量の不在着信を眺めていたところだ」
「だから、やめろって」
「年長者からの忠告だよ。規則正しい生活をとろうってね」
「ここで未来が変わった試しがあるのかよ」
「俺だって"俺"に期待してないさ」
多くの"俺"に出会い、誰もがずっと俺だった。いくら年を取っても失敗を繰り返し続ける俺にとって、ここが逃げ場でなくなるのは何歳の頃なのだろう。
いつだとしても、それは随分と長い途中休憩だ。
author:R_IIV
R_IIV usubaorigeki aisurakuto Tutu-sh Nununu Mtkani_666
ほこりっぽい匂いと、所々ひび割れた革のシートの中で、映写機のカラカラという鳴き声を一人で聞いている。
目の前のスクリーンには誰とも知らない役者がひとりおどけている。
足を踏みならし、妙な手振りを繰り返す。ヴァリエーションを少しでもつけたら良いのにね、と言おうとして、一人だったことを思い出す。
可笑しくなってふと飛び出した乾いた笑いは、しゃれこうべに似た乾いた音にかき消されてしまった。
「あなたは、なんでこんなものを私に見せようとしたのかしら。あなたが初めて携わった作品だと言うけれど、ちっとも面白くないわ。」
と言おうとして、また一人なことに気がつく。
夫は、あの古ぼけた映写機の側にいる。私に、自分が一番愛着を持っている映画を見せるために。
…でもね、あなた
やっぱりこの映画はつまらないわ。
だって
あなたが隣にいないんですもの。
あなたと見る映画だから面白かったのよ。一人じゃ持て余したこの感情をどうしようもないじゃない。そんなに映画が好きなのに、どうして見る側の心を分かってくれないの?
不満はいくつもあるけれど、もうどうしようもない。死んでしまった人に対して文句も言うのもおかしい話じゃないか、普通はそう言うでしょうね。
私がおかしいって?
いいえ、違うわ。
だって
夫はそこにいるもの。
彼女は振り返る。映写室の小さい曇りガラスに映る、光る目に微笑みかけるために。
あなたのスクリーンに、私はまだ映っている?
author:Dr_Kudo
Dr_Kudo×2 meshiochislash Jiraku_Mogana kyougoku08 highbriku ShinoguN izhaya
映画館が初心者向けのデートコースだなんて誰が言ったのだろう。暗闇の中で並んで二時間。対面でもなく会話もせず二時間。付き合い初めの頃なんて、ただでさえお互いのことを知るべき大事なタイミングであるのに。どうせ暗闇をいいことに、身を寄せてみたりとか、不埒なことをしたりとか、そんな言い訳だろう。映画にも相手にも失礼じゃないか。
と、そう思っていた。
選んだのはシリーズ物の久々の続編。横顔を盗み見たいのを堪えて画面を睨む。一秒たりとも展開を見逃さないように頭の中に要素をメモして思考を組み立てていく。三幕構成、一回目の敵との邂逅は何分目だ、主人公に降りかかるイベントが何を暗示しているのか、引用元は歴史書か聖書か哲学書か。序盤の情報から想定される結末の候補と伏線回収の係り受け。
後で考察をしてツイートするのが半分。どうせ終わってから質問攻めにしてくるこいつに完璧な答えを返すのが半分。残りは、デート中でも映画を見るからには集中するんだという意地。意地なのは分かっているし見栄っ張りを自認させられるのも癪だけど。
それでも。
迎えたクライマックスシーン。最後のピースがハマったことに満足して、僕はついに隣をちらりと見てしまった。そして、あいつの頬が少し濡れているのを発見した瞬間、僕は自分の顔にぐっと血が上るのを感じた。
慌てて前を向き直してこぶしを握り、何とか作品への集中を取り戻す。やっぱり映画デートは初心者向けだ。こんな顔を見られなくて済むし、こんな時に話さなくて済むし、終わってから共通の話題が出来る。癪だけど、僕はこいつとそうして過ごすのが好きなのだった。
author:Kuronohanahana
Kuronohanahana×2 meshiochislash Dr_Kudo pictogram_man ashimine nabes
1950年代の某有名アニメ映画の冒頭では、空を飛ぶ少年の影が逃亡し自由に動き回り、それを見つけた少女が影を捕まえ、少年の足へそれを縫い付けてやるという描写がある。私はそれを思い起こす度に、少し考えるのだ。
あの時縫い付けられたのは、影の方なのか。それとも少年の方なのか。
影にとっては、私のほうが影なのかもしれない。影が私に合わせて動いているのではなく、私が影に合わせて動かされているのかもしれない。そんな不毛なことを考えながら、私はアニメ映画の続きを見る。
この映画において、影についての話は冒頭だけで終わる。ただ単に、少年と少女が出会う為のキー、若しくは視聴者を引き込むためのフックでしかないのだ。少なくとも映画ではそうだ。原作ではどうなのか知らない。私はその原作を読んでいないからだ。今後も別に読む予定はない。
私はテレビをぼうっと見て、ひとつため息を吐いた。元々子ども向けの話だし、子ども向けの映画なのだ。大の大人が真剣に見るものではないだろう。そう思ってリモコンを手に取り、電源ボタンを押した。真っ暗になった画面に映った自分の顔を見て、思わず笑ってしまった。私は何だかひどく疲れた顔をしていた。
私はあの少年のように、大人にならないままであり続けたかったのだろうか。
author:2meterscale
2meterscale×3 stengan774 R_IIV Utsuki_K islandsmaster Hasuma_S
暗い部屋のなか、男が二人と少女が一人。それと犬が一匹。男は大柄、粗野な格好で銃と統一規格の魔杖を持っていた。女は痩身長駆で、病的なまでに全身が白く、目をスカーフで覆われ、口には猿轡が噛まされていた。ロングヘアの十代後半の女だ。ワンピースから伸びている両腕は、前に拘束されている。
「おれたち戦争が終わったのに、なんでこんなまずい飯を食いながら人さらいなんかやってんすかね」
男のうち、若い方が言った。いくらか立場が上に見える者が「私語は慎め」と制止する。
「軍隊さんでいらっしゃいますか? それも敗残兵」
そよ風になびく風鈴のような声で女が言った。隊長格の男が彼女の頬をつかみ、目を覆っている布を取り払う。女は目を閉じたままだ。長い睫毛が顕になる。
「怖くて目も開けられんようだな。おまえは今からどことも知れぬ場所に拉致される。ヒーロー映画みたいに助けに来てくれるやつなんかおらんぞ」
「でも、ここには台本も監督もありませんよ。プロットも」
女はそう言って、決断的に目を開けた。その瞳は緑、橙、黒斑。それらが不気味に蠢く。犬が口からよだれをたらし、わけも分からずといったふうに吠えた。次の瞬間、犬は女の左手を噛みちぎった。手首の断面も、目と同じ色だ。
「隊長、おれ、ステーキが食いたいです。目の前にあるじゃないですか。旨いステーキが。まずい飯なんてもう懲り懲りだ」
手錠の外れた女は犬をやさしく撫でた。銃声。隊長が放った銃弾は、女に飛び込んだ彼の部下の背中に当たった。女は立ち上がる。ぼとり、と鮮血の代わりに腕から垂れたのは、小さく、白く、か弱い虫だった。寄生虫。女の左腕は、彼女を女王とする虫の群れだった。
author:Hasuma_S
Hasuma_S×2 k-cal×2 highbriku Utsuki_K R_IIV
「えー別に行かなくてもいいっしょ」
私が一人で映画を見にいくのは、何も友人がいない訳ではない。やれインスタがどうの、やれTikTokがどうの。役者が銀幕の中で泣くより、手元の画面の中で笑う方が彼女らの心を撃つらしい。
何度も見た注意が流れる。この映画は公開何週後だったか。流行りを気にしない私は、いつも終了間際に見に行っていた。視線をずらし、誰が座っているのか確認する。今日は二人。私と、大人しそうな同い年くらいの女の子だけだった。そういえば、前も、前の前も見たような。ぼんやりと記憶を確かめていると、ようやく辺りが暗くなった。ああ、始まる。銀幕の中へ。役者達が生きた、物語の世界へ。
「……」
物語は終わり、幕が下りる。私は席を立ち、ドリンクを片手にフラフラと階段を降りる。物語に気圧された訳ではない。泣いて頭痛がする訳でもない。ただ。
「……つまんなかった」
「……面白くなかったなぁ」
ふと背後から聞こえた声に振り向く。あの女の子と目が合った。彼女は気まずそうに目を逸らした。私は、多分笑顔になっていたと思う。
「ねえ、ちょっと感想言い合おう?」
彼女は少し戸惑った顔をした後、ゆっくり頷いた。曰く、彼女も久々のハズレへの鬱憤を、この顔見知りに言いたくなったらしい。話すうちにお互い、実は感性も近いということもわかり、話はどんどん弾んでいった。そうして、息が切れるくらい話した後。
「……次は、一緒に見ませんか」
私はベッドの上で、そう言った彼女のLINEのメッセージ欄を見ていた。次の映画は、少なくとも彼女が好みそうなものにしよう。私は指を動かし始めた。
author:EianSakashiba
EianSakashiba×2 1NAR1 WagnasCousin hitsujikaip Utsuki_K TOLPO
「なんか久々にちゃんと映画見たなあ」
「噓だ、ずっと俺んちでぶっ通し鑑賞会したくせに」
「いやそれはあなた映画館でってことよ~」
「あーね、でどうだったん」
「……途中まではよかった!」
「確かにラストはなんか茶化してた感じあったかも、でもあの結末は少し考えれば自然じゃないか?」
「そうかなあ……」
「むしろ俺は途中の食事シーン飛ばしたのが気に入らん」
「ええ~そんな重要なシーンでもなくない?」
「いや大事な所だったぞ!そこで肩透かし食らったなあって」
「なるほどね……やっぱ別れよっか私たち」
「ああ……え?」
「映画っていう私の人生になくてはならないものを、人生とイコールで繋げられるものを、ここまで共有する事ができる人は貴方だけ」
「ああ……俺も話しててすごく楽しいよ」
「家に押しかけてさ、半日くらい映画見たりしたよね。私と正反対の意見だったり、新しい視点から感想を言ってくれたり、退屈しなかった」
「なら……どうして」
「うん、他の映画も見たいなあって、それだけ」
「な、んだよ、それ」
「ごめんね、クソ女だ私。また会った時も貴方は変わらないでいて欲しいな」
「いやだから意味が……そうかよ、そうだよな。お前、映画なら何時間でもぶっ通しで見れちゃうもんな」
「うん、やっぱりわかってくれるんだ。映画のこと」
「俺はクソ映画も好きだからな。……いつでも変わらねえよ」
「うん、……貴方はどんな映画でも、私の意見に合わせようとしないで、映画に対して正直だった。そういう所大好きだよ。じゃあまた!」
「ああ、また……」
「……お待たせしました、チーズドリアと目玉焼きハンバーグです」
「あ、ハイ……結構楽しんで観てたのによ……」
author:ShinoguN
ShinoguN indonootoko×2 EianSakashiba roneatosu SuamaX indonootoko Jiraku_Mogana
ロウソクとかどれだけ昔の話だよ。あの時は本当に文字通り上を下への騒ぎだったからな、役員がいるところで茶化すのはマジでダメだから。
今はフィルムの時代!まさに人生は一本の映画、男も女も皆役者ってわけ。
…言いたいことは分かる。レコードだと溝を彫るのが大変なんだ。三日で没になった。そのディスクじゃなくて?ディービーディー?野球は最近見てないからな…ドラフト何位だ?
悪かった悪かった。ディスクだのUSBだのは今時簡単に書き換えられるんだ。ロウソクよりタチが悪い。だから切り貼りできないフィルムということだ。アナログな職場にようこそ、DXなんて夢のまた夢です。
で、ここが映写室。壮観だろ?そこで忙しくしてるのはフィルムの入れ替えだよ。そのだな、やっぱり五分程度しか尺を採れなかったやつはあるんだ。それでも、生み出された以上は、な。
引継ぎは以上だ。何とか間に合ってよかったよ。もうドルビーのマークが出てきてる。監督の名前が出てくるまであと1分もない。ここからはお前の仕事―to be continued?え?続編決まったの?
author:hitsujikaip
hitsujikaip×5 stengan774×2
世に様々の映画あり。各々多くのくさにわかれむ。やちくさの映画を見むといふ者も、全てはえ見まじ。アメリカの映画を見ず我が国の映画を見る者はアメリカの映画を知らず、逆様もまたしかり。されど、出羽守は己が国の映画をしらずと言ひて恥と思はず、翻て己が国の映画はかの国の映画に劣れりといふ。また、肝御宅は我が国の映画のみを見て唐国やわたのほかの映画など言ひそしることを恥とおもはず、しかして我が国の映画を実なき言に依て讃ふ。出羽守と肝御宅とに限らず、いみじき大恥なり。まへに現れぬべきものとそのこころとのあひだがらを弁へ知らず、ただ自らの及ばぬ雲に唾吐くさま、いとさがなし。おほかた、ものの現れともののこころとを結ぶことわりはおのづからいづるものにあらず。全て決め事なり。あひだがらを弁ふるたづきも知らず、己が道をおろそかにして他の道を言ひそしり、さへづりを書き散らす人は、いかなる心ならむ。もしさもさへづらば、「あないみじ、いとあやしき痴れ者なり」とて人々手を打ちて笑はむ。ただ映画に向ひ、ひとり己が道を行き、心をやすくせむこそよけれ。
author:Tutu-sh
Tutu-sh×3 SuamaX ShinoguN Gokipo WagnasCousin
流行り病の気晴らしに、映画館へ足を運んだ。椅子を浮かび上がらせていた光源が鳴りを潜めると、大音量の予告編が私の体を芯から揺らし、ポップコーンの香りが鼻腔の奥をくすぐった。この場はいつも私の心を満たしてくれる。主役にも、脇役にさえなれずとも、非日常がここにある。
今日は或るSF映画の4DXだ。ケン・ワタナベが銃を抜き、銃声と共に硝子を散らす。カメラワークと同期して椅子は大きく回転し、宙に浮く感覚をこの身に叩き込む。後ろで響く破壊音は身に迫る危機を体現し、根源的緊張を呼び起こす。まあ、悲鳴が少しくどい気はするが。
場面が切り替わる。水塊の躍動。仕掛けのミストも稼動して、顔に霧を噴き付けられた。湿って垂れた髪の向こうでは人物が乱闘を続けていたが、しかし水が多い。何もここまで濡らさなくても良いだろうに──
ぽとりと足元で音がした。
劇場の音響ではない。霧吹きの水滴の音でもない。ぬめりのある音がした。
もう1滴落ちた。音は次第に近く、近く、距離を詰め──やがて、沈黙した。
去ってはいない。布地の上に落ちたらしい。
背もたれの裂ける音がした。砥がれた刃物のような何かが、背後で樹脂を掻いている。椅子の布地に何かが刺さり、びりと裂ける音がした。何かが居る。他の客は、スタッフは、どうしたのだろう。何があった。
鎌をあてがうように冷気が首を取り巻いた。悪寒が走り、気体がくだる。背後に何かが立っている。鉄やポップコーンの臭いと共に。
人の熱気は、匂いは、音の振動は──これを誘き寄せたらしい。私が映画に惹かれたように。冷えきったそいつの爪は、私の顎を引っ掻けた。
author:meshiochislash
meshiochislash Gokipo×2 aisurakuto usubaorigeki Ruka_Naruse hitsujikaip
くしゃり、と。小さな音と感触で、ポップコーンを踏んだことに気付く。カーペットに摩耗したコンバースの底を擦り付け、潰れた破片を振り払い歩く。別に立ち止まるほどでもない、映画館ではよくあること。けれど、少し考える。崩れる音が聞こえるほど、形を保ったポップコーン。俺より先の誰も踏まなかったポップコーン。
何故出口から一番遠い席だった俺がこれを踏むことになったのか。考えた後に、自分がずっと壁際を歩いていることに気付く。真ん中を歩き、人に混ざるのを避けるように。人がまばらな時間帯を狙って観に来て、人から距離を取れる端の席を選んだのと同じように。自分の虚しい習性を実感し、頭を抱えるように掻く。
ただ、同時に。ポップコーンが落ちているということは、俺以外に壁際を歩き、この時間帯に映画を見る奴がいるということでもある。ポップコーン一つ分の、あまりにも薄い繋がりに想いを馳せる。この思考の無意味さと、存在も不確かな同族へ、ちょっと笑いを向ける。
出口の前でふと振り返る。清掃員が忙しなく、歩いた床を掃いていた。俺が踏んだものも、そうでないものも。ポップコーンの欠片は塵取りに消えていく。こうして当たり前のように、映画館のカーペットは清潔に保たれている。
別に寂しくもない。
author:ashimine
ashimine×3 Hasuma_S KABOOM1103 Nununu Dr_Kudo
自分が罪を犯すとしたら、それはどんな犯罪だろうか。時々妄想していた。
些細な万引きだったり、優しい人を騙したり、或いは 嫌いな奴を殺したり。
でも。僕は震える右手を震える左手で抑え込みながら考える。
生まれて初めて法に背く行為が「これ」になるとは、思いもしなかった。
「え、君も好きなの、この映画?私も!そうなんだよ!わあっ、██監督好きな人と話せたの、初めて!」
「私と一緒に?いいの?えっ、朝1番の席を!?楽しみにしてたのその作品!」
「ううん、なんか……微妙だったね。あはは、失敗。え、そんなことない、楽しかったよ、本当!……誰かと一緒に映画を観たのなんて、何年振りかな。」
「監督の最新作、やっと発表されたんだよ!3年待った甲斐があったなあ。」
「……ふふっ、そうだね。大分先だろうけど、その時はまた、一緒に。」
「会いに来てくれたんだ。ありがとう。うん、友達でお見舞いに来てくれたの、君が1人目。」
「なんかね、もって1年なんだって。」
「うん、お願いはしてみたの。でも先生は絶対ダメだって。歩くのも危ないのに、外に出るなんか以ての外だ、って。」
「仕方ない、よね。でも、でもさ。せめてもう少しだけ、待ってくれたら良かったのにさ。」
「ごめんね、君との約束、破っちゃって。」
「最後に一緒に、映画観てみたかったな。」
誰にも見られてないことを祈りつつ、ポケットに入れているスマホのレンズを上側に傾ける。録画は外に居たうちに始めていた。
スクリーンに映る、千回は見た、あの映像。
「劇場内での映画の撮影・録音は、犯罪です。」
滑稽な筈の映画泥棒が、今日は何だか格好良かった。
author:roneatosu
roneatosu tutuji Utsuki_K KABOOM1103 AAA9879 WagnasCousin highbriku
不一致桜 @asitflows · 2019年10月11日
頭がどっかいったせいで映画見れん。死
もう3年前。未だに私の頭部はどっかいったまま。頭が無いってことは脳みそも目も口も骨髄液も全部なくしたって意味で超損した気分だった。職場でも「頭どうなされたんですか?」ってうるせえよ。百回は聞いたわ。同情するなら頭くれよって話なんよ。
保険降りたのは不幸中の幸いだった。気に入ってたのにな、頭。顔は綺麗だし髪の毛も艶があって歯も毎日磨いて手入れしてたし……。記憶が多少美化されてるのもあるけど今でも替えを買う予定はない。全部見劣りしてしまう。まじで最悪、今でも最悪。金曜夜なのに猛烈にムカついてる。金曜ロードが見れねえんだよ。ふざけんなよ。トレンド入れんなカス。
不一致桜 @asitflows · 6秒
まだ見つからんが?不一致桜 @asitflows · 2019年10月11日
頭がどっかいったせいで映画見れん。死
最低な気分で適当に検索をかけていると、一番上にそのツイートがあった。
飢餓 @kigajp · 8時間
泣きそうです。ベッドの下で飼ってたイチジク52匹全員死んでた。
そんなわけでこのツイートをもう5分は見てた。何か3年前以降の自分と共鳴?するものがあった気がして、理由は分からないけど同情した。不幸はどこに転がってるかわからないし、誰が拾うかも分からない。
フォローしようか迷った後、結局いいねだけ押してTwitterを閉じた。
「葬式どうするんだろうな」という点は最後まで謎だった。
author:Dr_rrrr_2919
TOLPO×2 ashimine×2 Gokipo kata_men aisurakuto
映画を見るのは好きだった。ラヴ・ストーリーからSFまで、俺の感性に合いそうなものは片っ端から借りて、日曜は一気見する。そんな生活に不満など、全くなかった。
『趣味: 映画鑑賞』と、マッチングアプリのプロフィール欄に記入した。顔は中の上程度、学歴もあるほうで、学生時代はまあモテていた。きっとすぐ申請が来る、と思いながらも、鼓動は速くなっていた。俺らしくない。それからしばらくの間は、別アプリの通知に悩まされていた。
俺に申請したのは俺好みの、可愛げな印象の人だった。家は最寄り駅からさほど遠くないらしかったので、映画鑑賞の日をデートに変えた。
事前に決めた日に合流すると、彼女はペットショップへ行こうと提案した。彼女は動物、特にウサギが好きで、次の引っ越し先はペットOKの物件か、などと考える俺を無邪気に見ていた彼女は、ウサギにも劣らない可愛らしさを放っていた。
15時過ぎにはスタバに行って、お互い趣味の話をした。好きな動物とか、食べ物とかを訊かれる中で、「同じだ」と可憐に微笑む彼女を直視できないこともしばしばあった。が、「おススメの映画は何ですか」と訊かれ、顔が引き攣った。「好きなジャンルのを探すから、また会えるタイミングを教えてほしい」と伝えると、さりげなくLINEを交換できた。
その後、レンタルショップに直行した。邦画がキチンと整頓された棚から、〈彼女好みのヒューマン・ドラマ〉をひたすら探していた。あるひとつのケースに指をかけたが、その指は溜息とともに離れる。
その瞬間、「俺のために映画を選んでいる自分」が好きだったと気づき、それ以降は全く映画を見ていない。
author:kata_men
Dr_rrrr_2919×2 TOLPO×2 roneatosu pictogram_man
映画館で上映中にスマホ見る奴っているじゃないですか。
私、そういう奴らが嫌いでして。まあ殆どの方が嫌いだとは思うんですけど、私の場合そういう奴らはこの世から消え去ってしまえばいいと思うくらい嫌いなんですよね。
ついこの前、映画を見に行った際にそのスマホ野郎に遭遇致しまして。なんでこういう奴らが居なくならないんだと内心ふつふつと思いをめぐらせていた時、ふとそいつを殺してみようと思ったんです。
んで、殺したんですよ。こう、サクッと。
そして次の週映画を見に行ったんですよね。そしたらスマホ触ってる奴がいるんですね。勿論殺した奴とは別の奴です。
また殺したんですよ。こう、サクッと。
で、また映画を見に行ったんですね。居るんですよ。
殺したんですよ。こう、サクッと。
サクッと。
サクッと。
何回か続いた後、映画を見に行ったんですけど。まだ居るんですよね、スマホを触る奴。
その時悟ったんですよね。こいつらめちゃくちゃ居るんだって。社会に沢山潜んでるんだって。バカバカしいにも程がありません?ゴミを片付け用としてもゴミが山のように積もってるんですよ。
これが私がゴミ掃除を試みた動悸ですよ、刑事さん。……もうよろしいです?そうですか、はい。ああ、そうだ刑事さん。拘置所って映画見れます?今日見たい映画があるんですよ。
author:SuamaX
k-cal×2 aisurakuto×2 izhaya islandsmaster Dr_Kudo
経を聞きながら死んだ父との記憶を回想していると、子供の頃、父に一度だけ映画館に連れていかれたことをふと思い出した。
当時の映画館は今ほどクリーンな空間ではない。大人は皆そこいらで煙草を吹かしていたし、前の座席に足を掛けて座るような輩も少なくなかった。ただ一つ、大声で騒ぐことのみが絶対的なタブーとされていた。
その頃の私は聞き分けの無いガキだった。見に行った映画があまり子供向けの作品ではなかったのもあり、上映開始から40分も経たないうちにもう飽きた、帰りたいと愚図った。父はそんな私を連れながら、まだ映画が上映中のシアタールームから退室すると、そのまま映画館を後にした。
怒られる、と思った。このまま家に帰ってこっぴどく叱られるものだと思っていた。ただ、私の予想とは裏腹に父はその足取りで喫茶店に向かい、私に1ピースのケーキをご馳走してくれた。
父が言うには、子供には楽しくもないはずなのに自分の趣味に付き合わせてしまったから、その埋め合わせとしてご褒美をやるという事だった。その上で、映画を楽しんでいる人の邪魔をしてはいけないという事を、やんわりと諭された。
今になって思えば、多分こんなものは方便だった。私との距離を掴み損ねていた不器用な父が、なんとか私に接しようと思って、自分にも非があるからケーキを奢らせてほしいなどといった苦しい言い訳をしたんだと思う。ただ、当時の私は何も考えず喜んでケーキを食べていた。
ちらりと横を見る。隣に座っている息子はいかにも退屈そうだ。
葬儀が終わって一段落ついたら、二人でファミレスにでも行ってみても良いかもしれないと思った。
author:usubaorigeki
usubaorigekil×4 EianSakashiba stengan774 ashimine
私、映画館って言うのが苦手で、最近は行ってませんでした。映画自体は好きなんですけど。
……何年位前だったかな、私は映画館で上映開始を待ってたんですよ。携帯もマナーモードにして、大好きな俳優さんが出てくる映画というのもあって、まぁそれなりにきちんと気合いを入れて待っていたんですね。
~♪
上映開始を知らせるメロディ。いよいよ、もうすぐ始まる、辺りが暗くなった。という所で、スーツを着た壮年という感じの男性が、小さい鞄を持って隣に座ったんです。
そして、始まる映画の予告映像。アクション、ラブストーリー、サスペンス。それらが流れた後、それは始まりました。
スクリーンの方から見たような、人で一杯の劇場の映像。観客は全員手を叩いて、一心不乱に笑う中、1つだけ空いている座席の後ろから、真っ白な手が伸びてきます。そして、姿を現す異形の頭。
『NO MORE 映画泥棒』
映画泥棒でした。観客が笑い続ける中、映画泥棒はカクカク踊り、やがて捕まりました。
次の瞬間、隣の男性が大声で笑ったんです。ふと見ると、驚きました…。いつの間にか手持ちカメラを持って、それこそ撮影してて。隠そうとしてなくて。当然、その人は劇場スタッフに連れていかれました。その間も、ずっと笑っていて。
楽しそうでした。
……あれから、今まで。何となく映画館に行こうと思えなかったんですが、昨日行ったんですよね。また、見たくなってしまって。
見れるとは思ってなかったんですけど、何と今もやってて。いや~本当に行って良かったです。面白かった…。
見ます?綺麗に撮れたと思うんですけど。
author:Utsuki_K
Utsuki_K 1NAR1×2 roneatosu×2 stengan774 pictogram_man
一面の白の中でよろよろと、だが着実に足を動かして進む。足音はすぐに雪に吸収されて消え、自分が独りであることを再認識させるようだった。
恐らく旧国道の、電信柱沿いに行けばどこかの「組合」に辿り着くはずだ。
隅から隅まで調べたが、村落に生き残りは誰一人いなかった。凍えきった家の中、眠るように息を引き取っている老人の死体があるばかり。家の数と比べて死体の数が少ないのは、動ける者は村から出て行ったからだろう。一縷の望みをかけたその行動が実ったかどうかは、私には知る由も無いが。
戦利品と言えば北関東統一規格の配給食と軽気燃料、3束の薄紙と1瓶の酒くらいだった。
納屋にあった猫車と背嚢にそれらをできるだけ詰め込み、村を後にすることにした。紙の一部には震える字で何かが書いてあったが、それは置いていくことにした。
発電機はなぜか放置されていた。実に惜しいが運ぶ手段が無い。あるいは、あのジープの連中だったら持って行けたかもしれない。それを運賃代わりにすれば、明日の宿場代を渡さなくて済んだはずだ。早まったことをした。
色の無い世界、音の無い世界を歩いていると、昔見た映画を思い出す。キッド、アイアン・ホース、黄金狂時代……。あの頃は良かった。何もなくとも、楽しい夢だけは見ることができた。
映画は2時間もあれば終わるが、人生は続く。続いてしまうと言ってもいい。とはいえ劇的な幕切れがある保証は無いし、案外ころりと死んでしまうかもしれない。私はそんなのごめんだが。
独りだと取り留めもないことばかり考えてしまう。日が暮れる前に急がなければ。私は灰色の空を見上げ、くしゃみをひとつしてから、汗をかかない程度に歩みを速めた。
author:Nununu
meshiochislash×2 highbriku×2 Ruka_Naruse EianSakashiba SuamaX
「くだらねぇなぁ」
それがいつも、撮った素材を確認する裕二にかけていた言葉だった。
裕二が映画を作るようになったのは高校時代。空き時間に一人で空や人ごみを撮ったり、各々会話する級友たちの声が混ざったざわめきを録音したりしていた。映画と言っても高校生が一人で作ったものなので役者はジオラマ人形、音もほぼ環境音だけでセリフも何もなかった。映画というより人形劇が正しいのかもしれない。
映画の素材を集める小学校以来の友人を見て冷やかしのように、くだらない、と言いつつも、僕は裕二のこだわりに感嘆していた。高校生にできる工夫の全てを詰め込んだ映画を彼の部屋で上映するとき、観客はいつも裕二と僕だけだった。学校で彼が作業するのをいつも見ていた僕は上映中ほんのりとした達成感と優越感に浸っていた。
あれから10年が過ぎた。裕二が倒れ、亡くなる前まで仕事で作っていた映画のデータを葬式で受け取った僕は、「やっぱり映画にはポップコーンだろ。」と裕二が買っていたチンする紙袋のポップコーンを用意した。
初めの数十分だけ編集されたその映画は、高校生の裕二が作ったものとは比べ物にならない程しっかりしていた。高解像度の画面の中で、人間の役者が話す、走る、笑う。しかし、何かが足りない。
「くだらねぇよ。」
僕が冷やかした時、いつも笑って裕二はそう返した。
「素材集めが楽しいのは、これがどう映画になるか知ってる僕だけだから。」
そんなことを思い出した時、映像はぶつりと途切れて終わった。
「…くだらねぇな」
僕は掴んだままのポップコーンの紙袋をくしゃりと握りつぶした。
ぱらぱらとポップコーンがこぼれていった。
author:AAA9879
AAA9879×2 aisurakuto 1NAR1 Dr_rrrr_2919 meshiochislash tutuji
2筋の硝煙が漂う。1つは俺のショットガン、もう1つはアイツのリボルバーからだ。
俺の弾はアイツの頭部に直撃した。アイツの脳漿はまき散らされているのがこの薄暗い劇場からでも分かった。
壁にショットガンを立てかけ、俺は座席に腰を下ろす。温かいものが真ん中から抜け出ていくのを感じる。
悲しみだろうか、撃ち抜かれた胸から溢れる血からだろうか。
どっちでもいい。
スクリーンには映画が流されていた。大勢に囲まれた男が啜り泣いていた。
なぜかこのモノクロの映画が終盤だと分かる。……ああ、一度見たからだ。ちょうどこのシーン辺りで仕事が入ってこの劇場から出たんだ。
アイツはそれを嫌がって、3日は口を聞いてくれなかった。
上着のポケットを漁り、タバコを取り出す。が、手が震えて取り落としてしまった。箱ごと足元の俺の血だまりに浸かってしまい、取る気が失せた。
1週間後にはマトモに口を聞いてくれて、『トップガン』をレンタルして見せてくれた。この俺が名前を覚えるぐらい本当に良い映画だった。最初の音楽が大好きになった。こうやって口ずさめるぐらいには……
ダメだ。血がこぼれるだけだ。
限界。
最後にアイツのツラでも拝もうか、とも思ったが俺が吹き飛ばしたんだった。
仕方がないからスクリーンを見た。いつの間にかカラーになっていた。大勢の人が墓に花を添えていた。
涙を流した!この俺が!
そして再び場面は移り変わり、俺は涙を流して微笑んだ。
……これがラストシーンか。怒るわけだ。お前はこれを見せたかったんだな。
ケイシー、俺にも心があったぜ。
author:indonootoko
indonootoko stengan774 islandsmaster highbriku 2MeterScale R_IIV nabes Ruka_Naruse
ヤツとの思い出を想起するなら、卒業制作は欠かせない。
同好会総勢3名による卒業制作は時代劇チャンバラの10分映画だった。
俺とヤツは同じ剣術道場出身の侍で、戦に別陣営として参戦し相まみえるという設定だ。小道具は演劇部からの借り物。大した作品では無いが、俺たちは撮影に夢中だった。
クライマックスの殺陣、場所は校舎裏庭の銀杏林。向かい合う演者二名の側面にカメラは置かれた。背景に敷地を囲うフェンスが映ってしまうが、俺達の安物カメラの画質ならよくわからない。
俺は椿三十郎のラストの様な殺陣が撮りたかった。二人は同胞だから、殺意ある激しい斬りあいにはならない。流れゆく静寂の向こうに一太刀決着。その一閃に二人の友情や虚しさを投影したかった。俺はこの殺陣に、卒業で別れるヤツへの想いを込めていたかもしれない。
刀に手をかけ、睨み合う二人。俺の想いがヤツにも伝わっていたのだろう。ヤツの表情からそれが読み取れる。秋の銀杏林、流れる風と落ちる黄色がニクい演出。緊張の静寂、その時だ。
「ブオオン!」
背景に佐川急便のトラックが通った。
カメラマンが映像を止めようとしたが、俺達は崩れなかった。この緊張感は今しかない。NGは後で編集すれば良いのだ。二人を再び静寂が包もうとした瞬間、真剣な撮影を嘲笑う様に、またも茶々が入る。
「今日10時頃、市役所の職員を名乗る詐欺の電話が~」
防災放送。俺達は流石に緊張が解けてしまい、刀を持つ手をだらりと下げた。俺とヤツが笑うと、カメラマンは撮影を止めた。
結局、映画はこれで完成になってしまった。題名は「間の悪い男」だ。
なぁ、俺は本当は撮り直したかったよ。本当に間の悪い"ヤツ"に献杯!
author:Mtkani_666
Mtkani_666×3 kyougoku08×2 Kuronohanahana Jiraku_Mogana 2MeterScale
終電の時間の後のレイトショー。始発が動くまでの間、自宅までの交通手段を失った我々を映画館は匿ってくれる。私は今回で二度目のお持ち帰りを持ちかけてきた男を「一本だけ見たらホテル行こう」「酔いが冷めないと興奮できない」と言いくるめ、ガラ空きのレイトショーに連れてきた。私は一度抱かれただけで彼女面ができるほど純情ではなかった。彼からワンナイト要員だと分かりやすく態度で示されてむかついた反面、微弱に明滅する恋の灯火が複雑に揺れるのを感じる。優しい声でもう一度睦言を聞かせて、と求める私は恋の経験が希薄な少女だった。しかし私のことを好きにならねえなら死ねと悪態をつく私は、間違いないほど生々しく生きている女だった。
今夜の上映は三本。特大の第一シアターが締め切られ、第二から第四シアター(小劇場)でそれぞれ放映される。彼は掲示された3枚のポスターの前に立つ。私はその背にそっと中指を立てた。
「『タイタニック』、『シンドラーのリスト』、『デビルシャーク』。短いやつがいいな、一時間半とかそのくらいの」
こっちを向いたので気づかれないように中指を解く。彼は本当に分かりやすい、ヤリたくて仕方がないことがあけすけだ。しょうがない、体はくれてやる。
しかし―
「『シンドラーのリスト』を見たことは?」
私の小賢しい愛情表現が先だ。
「初めて見る。短いの?」
「ええ。この中だと一番」
一番長い。そして、何も考えず画面を見ているだけなのに頬に涙が伝うような痛みの映画だ。単純に私はたまにこれが見たくなるので付き合ってもらうし―別れる男に花の名前を教えるのと同じようなことを、してみたかったのだ。
author:Ruka_Naruse
Ruka_Naruse roneatosu stengan774 pictogram_man indonootoko Dr_Kudo R_IIV
市街地から国道沿いに3,40分ほど走った郊外に『カイエーシネマランド』という映画館がある。実際に行ったのは一度だけ、小学校の4年生だったか、学区のこども会の催しでマイクロバスに乗ってそこに行ったのだ。
そこはいわゆる複合型レジャー施設で、ボウリングやカラオケ、温泉なども併設されていた。当時最先端だった”4DX”の映画が見れるのは県内でそこだけだったのだが、その時見たのは普通の映画だったので甚くがっかりした記憶がある。ちなみに映画の内容は憶えていないが、兎に角大きな建物というイメージだけが痛烈に残っていた。
当時の俺はシネマランドを大変気に入ったようで、見たい映画がある度にシネマランドへ行きたいとせがんでいたのを憶えている。しかし当然ながら映画を見る為だけに遠出する理由もなく、少年時代の俺が再びそこへ行く事は終ぞ無かった。
再訪するべくハンドルを握っているのは22歳の晩夏、数か月前に話題になっていた映画を見ようと思い立つも近所の映画館ではとうにやっていなかった為、唯一手頃な距離でまだその映画をやっていたシネマランドにやってきたのだ。道連れは居ない、記憶を温ねる為だけに赴いたと言っても過言ではなかった。
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ナビが目的地周辺を告げる、日焼けした看板が斜陽に照らされていた。車を降り、駐車場から改めて見渡したシネマランドは酷くこじんまりとしていた。4階建てだろうか、今日日のショッピングモールの方がふた回りほど大きいであろうその建物に記憶の中の色鮮やかな巨像はなく、半券に導かれた6番シアターの百余席には俺の他にキセル客と思しき老人が一人居るばかりだった。
……ああ、何だかな。
author:pictogram_man
pictogram_man tateito×2 stengan774 ShinoguN Tutu-sh 1NAR1
リヨン、1895年、お昼頃。男女の労働者が、開かれたリュミエール工場の出口からわっと出てきて、それぞれがつかの間の休息に向かった。
一部の若者らが工場近くの地下に最近できた噂の小劇場に行こうとしていた。噂の出処は、最近工場に入った50近い男である。彼は工場に勤務し始めると、労働者の服の隙間に劇場の場所を示す地図を忍ばせていた。
その日、工場出口を撮影していたシネマトグラフの前を彼は通過した。彼は、6年かけひそかに作った映画を本日ついに公開する予定の小劇場に足を運ぶ若者らの後をつけていきたかった。だが彼は疲れていた。この日を待ち望むあまり慢性的な睡眠不足で、しかも老いたる肉体には厳しすぎる労働を終えた直後、彼は朦朧としながら劇場に向かおうとした。が、彼は眠り込んでしまった。若者らは公開されるはずの映画が始まらないので労働に戻っていった。
彼は目覚めると見知らぬ駅で寝そべっていた。時間はとうに過ぎていた。やってしまった、もう間に合わぬ!彼はすっかり意気消沈し、何処へでも運び去ってしまえという思いで列車に乗り込んだ。列車はラ・シオタ駅へ向かった。
パリ、1896年。リュミエール兄弟の映画が公開されると聞いた観客が集まった。そして映画が始まると人々は叫び声をあげ四散した。彼らは映像内の実寸大の列車が煙を濛々とあげながら走ってきていることに恐怖したのである。一方、その様子を見ていたリュミエール兄弟は別の恐怖と驚きで半ば放心していた。無声であるはずの映像から観客の声に交じって明らかに「誰か降り方を教えてくれ!」と叫ぶ男の声を聞いたのだ。
ルイ・ル・プランスの行方は未だに謎に包まれている。
author:aisurakuto
aisurakuto×3 Kuronohanahana×2 Ruka_Naruse Hasuma_S
映画を一本見る度に、自分が化け物になっていくような気がしている。
元々、同世代が見ないような映画に興味はなかった。映画鑑賞を趣味に数えられるようになったのもここ数年。初めて意識して借りた映画は『13日の金曜日Part1』、殺人鬼として登場するのはジェイソンの母親だという話を聞いたので、何となくDVDをレンタルした。
総合的に言えば、『Part1』はさして面白い映画ではなかった。もう40年も前の映画だから仕方がない。主人公とジェイソン母の決闘を眺め、ただただ映画が終わるのを待つ。緊迫はしたが、流れは見えていた。
やがて、湖の小舟に乗って主人公は脱出。夜は明け、朝日が彼女を照らす。サスペンスを際出させる音楽から解放され、沈黙が僕の座るソファすらも飲み込んだ。僕は息を吐き、伸びをした。
そのとき、ジェイソンが現れた。奴は油断していた僕にしがみつき、僕を湖へと引き摺り込んだ。
思えば陳腐なジャンプスケアだった。大がかりな飛沫と耳をつんざく悲鳴、突如映り込んだモンスター。しかも怪物が現れたのは主人公の見た悪夢というオチ。
今では見飽きた演出に僕は心臓を握られ、同時に鑑賞者を呪った。嘘つき。出てくるのはジェイソンの母親だけと言ったじゃないか。
前評判からは予想していなかった光景に、僕は溺れてしまった。呼吸不能の渦へと引き摺り込まれ、深く深く沈降する。
映画は最後まで見て初めて、面白いかどうかが分かる。ひとしきり震えてから、僕は微かに笑った。
映画を一本見る度に、僕の体は水面から離れていく。そこにしかない熱を求め、マニアックの湖底へ潜る。世間一般から遠ざかり、僕はジェイソンに成り果てる。そんな気がしている。
目利き部門 優勝
suamaX
(32pt.)
どういうこと?
準優勝
kiygr
(13pt.)
文体部門 優勝
hitsujikaip
(5pt.)
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企画代理 - Hasuma_S
技術協力 - Dr_Kudo



